有明海漁民・市民ネットワーク

佐賀西南部の養殖ノリ不作問題に関する要請書を農水省に提出

 有明海漁民・市民ネットワークは2022年8月24日、よみがえれ!有明訴訟弁護団・原告団と共同で、佐賀県西南部の養殖ノリ不作問題に関する要請書を農水省に提出しました。

2022年8月24日

農林水産大臣 野村 哲郎 様

佐賀県西南部の歴史的ノリ不作の水産庁経営実態調査を受けて
有明海特措法に基づく救済措置を強く要請します

有明海漁民・市民ネットワーク   
よみがえれ!有明訴訟弁護団・原告団

 令和3年漁期における佐賀県西南部のノリ養殖業は歴史的な不作となりました。
 佐賀県有明海漁協15支所内において、西南部5支所(新有明、白石、鹿島市、たら、大浦)を除く10支所の行使者あたりの実績が枚数約280万枚、金額約3613万円であるのに対し、西南部5支所の行使者あたりの実績は枚数約88万5000枚、金額約886万8000円と著しく大きな開きがあり、西南部5支所は厳しい不作でした。
 この佐賀県西南部における歴史的なノリ不作について、私たちは昨年から水産庁担当者と意見交換を行い、有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律(以下特措法とする)第22条に基づく漁業者の救済措置と、そのための実態調査、および、原因究明と対策の検討を求めてきました。次期ノリ漁の開始時期が迫る中、私たちは、再三にわたり水産庁に早期対応を求め、水産庁は、本年8月15日にようやく、予定を大幅に超過して、「佐賀県西南部におけるノリ養殖の経営実態調査の結果について」と題する報告書(以下、「報告書」と言う。)を公表しました。
 報告書に基づき、水産庁は、特措法22条に基づく救済措置は不要との見解をマスコミに発表しています。しかしながら、今回、公表された報告書の記載内容のみをもってしても、到底、不要との結論はでてきません。より詳細な調査結果が開示されれば、更に悲惨な被害実態と特措法22条に基づく救済措置の必要は明らかになります
 以下、報告書だけからでも特措法22条に基づく救済措置が必要であること、および、より詳細な結果を公表すべきことを述べ、早急な意見交換を求めます。必要であること、および、より詳細な結果を公表すべきことを述べ、早急な意見交換を求めます。

1.報告書は「著しい漁業被害」と特措法22条の救済措置の必要性を明らかにしている
 報告書は結論部分の「4 総括」で、『令和3年漁期(令和3年9月~令和4年8月)の漁労収支を推計したところ、漁業共済・積立ぷらすを加えた漁労収入は、漁労支出とほぼ同額となった。また、漁業共済・積立ぷらすにより、ノリ養殖に要した経費分は補填されており、次期作の下支えの役割も一定程度果たしていると考察される。』としています。しかし、第1に、漁労収支が同額ということは、生活費が稼げないということです。水産庁は漁業者に対してどうやって生活していけというのでしょうか。漁業者は、漁期はほとんど寝ないで働き、それ以外も次期への準備で忙しくしています。それでも生活費すら稼げないのではとてもやっていけません。これが特措法の「著しい漁業被害」でなくして、何をもって「著しい漁業被害」というのでしょうか。第2に、収支同額では手元資金が残らず、ノリ養殖に必要な機器更新ができないばかりか、事業の継続そのものが困難です。次期への財源が残らない結果は、とても『次期作の下支えの役割も一定程度果たしている』とは言えません。この結果は、持続的なノリ養殖が困難な現状を明らかにしています。 

2.西南部5支所の結果だけでは詳細かつ深刻な被害実態が隠蔽される結果になる
 報告書では、令和3年漁期(令和3年9月~令和4年8月)における西南部5支所を平均した収支の推計しか示されていません。しかしながら、令和3年漁期における共販実績では、西南部5支所の間だけでも、たら支所や大浦支所と他の支所との間では大きな開きがあります。一番被害が深刻だった大浦支所と他支所では、行使者あたり、枚数で一番大きな支所の124万5545枚に対し大浦支所ではわずかに1万7060枚、金額で一番大きな支所の1322万9582円に対し大浦支所ではわずかに8万7000円しかありません。西南部5支所の平均した収支の推計値だけによる判断は、たら支所や大浦支所の漁業者の悲惨な実態が隠蔽されてしまいます。実際には5支所相互間のみならず、個別漁民相互間で大きな開きがあります。実際の救済は個別にきめ細かく行う必要があります。氏名を伏せるなど、個人情報保護の配慮をした上で、個別の調査結果を開示してください。平均化した推計値でさえ生活費や次期への財源が残らない結果なのですから、個別漁民の数値の上からは相当に酷い実態が明らかになるはずです。
 以上、より詳細な調査結果を開示し、早急に意見交換の場を持つことを求めます。

以 上