本明川水位への潮位の影響

実測値と洪水シミュレーションを組み合わせた分析結果 見方と考え方

諫早湾の目次

1983−1990年の実例 1991−1996年の実例
 2000年9月に事例を大幅追加しました.全部で20例ほどあるので見やすいように2つに分けました.

埋津水位への影響

 埋津(本明川支流の半造川にあり本明川河口から5kmの地点)の水位変化に有明海の潮汐が及ぼす影響は,埋津の実測水位の変化と雨量から計算した予想水位 の変化を比較するとわかります(検証の手順を参照).比較のこつは両者の変動パターンが一致しているかどうかです. 計算にはいろいろな誤差が入るため,絶対的な値はなかなか一致しませんし,1時間程度の遅れ進みも避けられません.

 もっとも重要なのは線の折れ曲がり方です.図のBの右側のように増減が一致しない場合もありますが,その場合も折れ曲がり方は一致しています.

 潮位は雨量と無関係なので,潮位の影響があるとACのように予想と実測のパターンが一致しなくなります(潮位のパターンと一致します).そのような部分は赤色表示しています.

 非洪水時(図ではAの部分)の場合とくにわかりますが,通常は有明海よりも埋津の方が,潮位のピークは高くなり,ピーク時刻が遅れます.

 実例を集めた結果,埋津水位が潮位の影響を受ける上限は大潮でも3.3m未満(指定水位=通報水位 3.348mに届かず,防災に無関係な水位)であり,防災上,潮位の影響は何ら問題にならないことがわかりました.

埋津の水位と雨量のグラフを見る
(もう一枚の画面が開きますので,位置と大きさを適当に調整してご覧ください)

不知火水位への影響

 実例を集めた結果,本明川下流(河口から700m)に位置する不知火観測所の満潮時の水位は,洪水時B ′・非洪水時Aのいずれの場合でも,大浦(有明海)の満潮位とほとんど同じであることがわかりました.これは潮と洪水の重ね合わせ(足し算)がほとんど起こらないことを示しています.言いかえると満潮と洪水が同時に起こっても,それが原因で氾濫の危険は増大しないということです.


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 1999/2000年