収斂に関する『諫早水害誌』の記述

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 河口潮位を色々に変えてQ=1,450m3/secを使用し、不等流計算により洪水面を追跡したところ、いずれの場合も大体二キロメートル附近で一定水位に収斂することが分った。
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解説

 上記記述の意味は「本明川河口が満潮でも干潮でも,河口から2kmさかのぼると,洪水の水位は潮位と無関係になる,という計算結果が出た」ということです.諫早市街地は河口から3.5km以上離れています.

 『諫早水害誌』(諫早市役所,1963年3月5日発行)は1957年の諫早豪雨による災害の経過やその後の復興過程を約900ページにわたり詳細・多岐に記述した記録で,諫早の防災を語るには必読の書です.

 Qとは流量のことで川の横断面を1秒間に通過する水の量です.1,450m3/secは諫早水害時の河口付近の流量1900m3/secに0.764を乗じた値で,80年に1度の確率で発生する流量とされています.不等流計算は流量や河道の形状などをもとに,ある地点から順々に水位をたどって計算する方法で,自然河川の水位計算でしばしば用いられます.諫早水害誌には,水害後に本明川の改修計画を立てるために行われた計算の結果として記述されています.

 ここで重要なのは,1963年当時すでに行政機関は「市街地の本明川水位は洪水時に諫早湾潮位の影響を受けない」という計算結果を知っていた.言いかえると「諫早湾の締め切りが市街地の洪水対策に役立たない」ことを知っていたわけです.

建設省実測データによる検証 諫早湾の満潮と無関係な諌早市街地の洪水 不等流計算による検証結果


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http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年