諫早湾岸低平地の遠景写真 2000年6月18日撮影

諫早湾の目次

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諫早市小野島付近

 北西(地図では左上)側から小野島・森山を見たところです.写真左半分の緑色の部分が諫早干潟が干陸化しているところ,右半分の薄茶色の部分が低平地の水田地帯です.

森山町付近

 南西(地図では左下)側から森山付近を見たところです.写真左半分の上半分の緑色の部分が諫早干潟が干陸化しているところ,それ以外の薄茶色の部分が低平地の水田地帯です.




 いずれの写真でも,緑色と薄茶色の境界がもとの海岸堤防です.諫早湾岸の水田地帯はもともと干潟だったところを干拓して作ったところなので,満潮時に水田地帯の地盤よりも海面が高くなります.締切前は,満潮の間,水を海に排出できないため,水路(クリークという)に水を貯めておき,干潮時に排出していました.大雨のときは水路(クリーク)に水が収まりきれず,水田がしばしば冠水(厳密には湛水=たんすい という)してきました.

 参照 低地浸水の原因 干拓の方法

 締切後は調整池の水位が地盤よりも低い間(これを農水省用語で「常時」という)は潮の干満に関らず,連続して排水ができるため,冠水の時間が多少とも短縮され,冠水面積もいくぶん小さくなっています.その分,排水ポンプの稼動時間が短くて済む場合があるのは事実です.

 農水省や長崎県,地元の農家が言う「防災効果」とは一言で言えば「農地の水はけ」のことです.しかし,満潮時に水がはけないのは,干拓地であれば当然であり,ひとり諫早湾だけが抱える悩みではありません.諫早湾と瓜二つの佐賀県有明海沿岸でもこうした悩みの末,クリークの拡幅,ポンプの増強,河川の浚渫(しゅんせつ)や,雨量・水位監視網など,行政機関による努力を積み重ね,成果をあげているのです.

 満潮時の排水は,諫早湾締め切り方式を取るか,他の方法を取るかの選択の問題です.諫早湾締切方式を選択しなければ,その分,代替手段としてポンプの稼動を増やすわけですから,干拓推進論者がいう「締切のおかげで,ポンプの稼働時間が短くて済んだ」などという話は干拓を正当化する理由にはなりません.彼らの論理は「ポンプを動かす時間を短くしたいから,諫早湾を締め切っておくのだ」,「締切堤防の水門を開けるとポンプを動かす時間が長くなるので開けられないのだ」と言っているのと同じです.

 また,農水省は最近,「高潮防止効果」を強調し始めましたが,高潮は台風によって起るものなので,数日前から対策が取れます.太平洋上で台風が発生し,「九州に向かう可能性あり」と判断されるとき,調整池の水位を下げ始めれば,じゅうぶんに間に合います.高潮の予想が「空振り」になることはあっても,「不意打ち」になることは考えられません.冬場に水門開放を拒む口実として「高潮」を持ち出すのはデタラメさにもほどがあります.


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 2001年