佐賀県有明海沿岸の防災対策

平常時に開放されている水門

諫早湾の目次
佐賀県有明海沿岸の防災対策 見出し

 佐賀県内では筑後川・嘉瀬川・六角川の3つの一級河川と鹿島市付近のいくつかの河川が海に直接つながっており高潮堤防の整備が進められています.ほかは高潮に備えて河口や下流部に防潮水門が設けてあります.
 そのうち,牛津町の牛津江川(うしづえがわ),および佐賀の都心につながる本庄江(ほんじょうえ)・八田江(はったえ)・佐賀江川(さがえがわ)の水門は通常開放したままだったり,天候や潮に応じて開閉調節を行なったりしており,水門の何kmも上流まで潮が上っています.

 諫早湾の水門を開けると潟土(泥)が逆流堆積するという理由で,水門開放に反対する論理がありますが,潟土の逆流・堆積は諫早に限った現象ではなく,佐賀県内でも普遍的に見られます.諫早では本明川河口から5kmまで泥がさかのぼっていましたが,佐賀県の六角川では30km近く離れた武雄市内まで泥が逆流しており,諫早の比ではありません.それを目の敵にせず,当然のこととして受け入れて防災対策が進められています.
 

八田江防潮水門(上流側から見たところ)

2001年4月14日改訂

 水門が水面下で開いており潮がちょろちょろと音(お伝えできずに申し訳ありません)を立てて逆流している.毎日,水門の上げ幅を調整することで,川の満潮位をコントロールする.潮は八田江防潮水門から約8km上流の佐賀江川分岐点付近までさかのぼる.
 当然,潮にのって泥が数km上流までさかのぼり堆積するので,しゅんせつを行い河道を確保している.

参照 八田江防潮水門の運用

 

本庄江防潮水門(水門の奥が海)

 水門は満潮時も全開のままで船が往来しており,高潮や津波の危険があるときは水門が閉じられる.「郷土の自慢豊かな干潟」という文字が遠方からもはっきりと読める.海から泥(現地では「ヘドロ」と呼ぶ)が逆流してある程度まで堆積すると,水門を閉めて浚渫が行なわれる.ここでは潟土の堆積を当然のこととして受け入れ,それに適応した対策がとられている.
 潮は水門から5km上流の深町水門までさかのぼる.深町水門により,海水が遮断される.
説明板参照

蒲田津防潮水門(水門の奥は蒲田津排水機場)

 佐賀江川が城原川(筑後川の支流)に合流する地点にある.天候や潮の状況により,開閉調節が行われ,海水を最大限にいれると,写真左下のコンクリートが水没する.潮は佐賀江川を5kmさかのぼり,八田江との分岐点まで達する.

蒲田津防潮水門上流側の佐賀江川

 海水を最大限に入れると写真右端のコンクリート護岸が水没する.写真中央付近には潮にのってさかのぼり堆積した泥が見られる.このような泥は水門の5km上流まで続いている.泥にはカニやゴカイの巣穴が無数にある.泥のひび割れがないので,海水を入れる頻度は高いと考えられる.
 中央にある可動堰は支流のクリークに海水が入らないように設けられている.佐賀江川の本体は写真で左の方に続いている.

 

牛津江水門と牛津江排水機場

 六角川支流の牛津川(奥)とそのまた支流である牛津江川(手前)の間にある.Aの矢印の下の水門が開いてあり,六角川河口から約13km離れている牛津町の中心部に潟土を含んだ潮をそのまま逆流させている.大雨で牛津川が増水すると水位が周囲の地面より高くなり,平地の水がはけなくなるので,水門を閉鎖して排水機場(Bの建物)を稼動させ強制排水する.排水量は現在は毎秒30トンであるが50トンに増設中.

 この資料を作成するにあたっては,1998年秋の現地調査をはじめ,多くの方のご協力を頂きました.


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 1998・2000・2001年