2017年3月9日
農林水産大臣 山本 有二 様
有明海漁民・市民ネットワーク
代 表 松藤 文豪
3月8日付朝日新聞朝刊において、「国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐる和解協議で、堤防を開門しない案で決着をめざす農林水産省が、開門を求める漁業者を説得するための想定問答を作り、地元漁業団体の幹部に示していた」「国が協議を有利に運ぶために水面下で団体内の議論を誘導しようとしていた形だ」との報道があった。
この報道が事実だとすれば、極めて重大な問題であり、私たちは、農林水産省に対して、この報道に関連し、以下の点について、3月14日まで明らかにすることを求める。
この間の和解協議における「開門に代わる基金案」は、国がその内容を公開しているものであり、それに関して漁業団体に説明した会議や説明の内容は、当然、一般に公開されるのでなければならない。
しかも、朝日新聞の報道で示された想定問答は、
などという点において、極めて悪質なものであり、およそ行政が示すようなものとは考えられないというのが、私たちの率直な思いである。
そもそも、諫早湾干拓の「開門」をめぐっては、「開門」を命じて確定した福岡高裁判決と、「対策なしでの開門」を差し止めた仮処分について、それぞれ間接強制の訴えがなされ、これに関わる2015年1月の最高裁決定は、農水省に対して、開門してもしなくても国が制裁金を支払うような事態を解消し、「全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待される」と指摘していた。
さらに、この間の和解協議の出発点となった2015年10月の福岡高裁の勧告でも、「一般国民から見て異常な事態は、一刻も早く収束させる必要がある」との指摘があった。
このような経緯の中で、農水省側が和解協議において示したのが、「開門に代わる基金案」であったが、「基金案」への同意を取り付けるために、漁連に対し、秘密裏に「想定問答」を用意していたということは、農水省の「努力」とは、「開門」を求める漁業者を孤立させるための切り崩し工作だったと判断せざるを得ない。
私たちは、このような農水省の姿勢こそが、「一般国民から見て異常」であり、「開門」をめぐる紛争解決を妨げている最大の原因であると考えている。
私たちは、今回の報道を受け、上記の質問に対して、農水省が誠実に回答することを強く求めるものである。
以 上