本明川水位への潮位の影響

実測値と洪水シミュレーションを組み合わせた分析結果

1983-1990

は2000年9月公開の資料です.

諫早湾の目次

同じ期間の埋津の水位と雨量のグラフを見る
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分析結果の見方と要約に移る

★1983年6月

 小潮から中潮に向かう時期です.水位2.3m以下の時には明らかに満潮の影響が現れています.20日午前中(のところ)については,水位変化の山がふたつあり,後の山は雨量変化だけで説明がつかないので,潮位の影響が現れたと考えてもよさそうです.このときの水位は2.7m前後です.この水位は指定水位 3.348mに届かず,防災上,何ら問題になりません.

★1984年8月

  台風が21日午前中に九州西海上を通過したため,前日から東寄りの(湾奥に向かう)風により水が吹き寄せられ,湾奥(不知火)の潮位が湾口(大浦)の潮位よりも高くなっています.

 ところが,21日午後から南西寄りの風に変わり,北東に開いた諫早湾では水が吸い出されて,湾奥(不知火)の潮位が湾口(大浦)の潮位よりも低くなっています.また,同日には副振動が発生し,不知火の水位に2時間周期の揺らぎが見られます.

 副振動については1985年8月の項目を参照ください.

 なお,埋津の水位への満潮の影響は小潮だったため,増水前(水位1.6m程度)にわずかに見られるだけです.

★1985年8月

 大潮と台風の高潮が重なり,本明川下流で数箇所の氾濫が起こりました.不知火の水位が2時間周期で激しく上下しています.これは副振動(別名 あびき現象)と呼ばれ,諫早湾の水がこの周期で揺れやすいことが原因です.

 この日は初め湾奥に向かう風のため湾奥(不知火)の潮位が湾口(大浦)より高くなったところで台風が諫早湾付近を通過したため,風向きが逆転して湾奥の潮位が急に下がり,ちょうどブランコを加速するように往復で湾の水に勢いがつけられ,その反動で湾奥に水が押し寄せたときが満潮だったため,著しい高潮となったものです.

 なお,埋津では計器の異常のため,水位観測ができませんでした.

★1985年9月

 短時間に激しい雨が降り,埋津の水位に鋭いピークが見られます.潮位の影響は現れていません.減水期に計器異常のため埋津の実測データが欠けています.

★1986年6月

 小潮にあたっています.潮位の影響は見られません.17日未明の増水途中に一見潮位の影響のような小ピークありますが,シミュレーション結果でも対応する折れ曲がりがあり,満潮時刻より早いことからも,潮位の影響とは考えられません(埋津の満潮は大浦・不知火の満潮よりも必ず遅れる).

1987年7月

 大潮にかかっていないせいもあり,17日以降の本格的な雨の期間中,潮位の影響は現れていません.

 16日未明(赤らせん印)に,大浦潮位(海)よりも埋津水位(川)が低いという不思議な現象が起こっていますが,これは台風の通過後の強風で川水が海に押し出されているためだと考えられます.

★1988年6月

 大潮にあたっています.洪水ピークが干潮のため,ピーク時の影響は不明です.増水前と減水後に満潮の影響が出ており,影響が出る水位の最高は2.7m程度です.この水位は指定水位 3.348mに届かず,防災上,何ら問題になりません.

1988年7月

 中潮にあたっています.潮位の影響は洪水のピーク時には現れず,減水して埋津水位が2.5mをきったところで現れています.この水位は通常の大潮満潮位であり,防災上,何ら問題になりません.後半,不知火が欠測しています.

★1989年2月

 小潮にあたります.増水前と減水後に満潮の影響は見られません.水位のピークに3つの山があり,最初の山は一見すると満潮の影響のように見えます.しかし,雨量変化にも対応する3つの山があり,水位シミュレーション結果にも弱いながら「こぶ」があることから,このピークは雨量だけで説明がつきます.

★1990年6月

2000年11月28日修正

 小潮にあたります.増水前に潮位の影響が現れています.については,降水量だけで説明がつきます(この部分を除外したデータにより決定した貯留関数の式を使用し,降水量をもとにシミュレーションを行なった結果が図の黒線で示す「埋津予想」水位です).仮に潮位の影響があるとしても,この水位は大潮満潮位にも届かず,防災上,何ら問題になりません.

 洪水ピーク後は水位変化が複雑で,水位パターンから潮位の影響は分かりません.時間的な前後関係を見ると潮位の影響はないようです.

1990年6-7月

 小潮にあたっていることもあり,雨の期間中,明らかに潮位の影響が出たのは29日の昼だけです.

 2日の未明に影響が出ているようにも見えます(図の?印)が,予想水位にも同じようなパターンが見られますから,影響があると言いきれません.あるとした場合でも,潮位の影響が出る埋津水位の上限は2.5mにとどまります.この水位は通常の大潮満潮位であり,防災上,何ら問題になりません.

 不知火の計器に異常があったため,その期間の値は表示していません.

1991−1996年の実例に移る


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 2000年