諫早湾の位置と周囲

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諫早湾の地理
諫早湾の3次元フライトアニメーション

日本の中の有明海

 諫早湾を含む有明海は西九州に深く入り込んだ内湾で,その奥行きは日本有数です.広義の有明海は島原半島南端と対岸の天草下島の間の海峡(早崎瀬戸)より奥を指します.

 有明海の特徴である大きな干満差の原因は,湾の海水が潮汐の周期に共振して振幅が大きくなるためです.ちょうど皿に入れたスープを運ぶとき,体の揺れに共振してスープが大きくゆれる現象と同じです.この共振には野母半島(のもはんとう,別名長崎半島)と天草(あまくさ)下島の間から千々石湾(ちぢわわん,別名橘湾)一帯もかかわっており,これを有明海に含める考え方もあります.

 有明海は大陸に近く,日本が大陸と陸続きだった氷河時代には黄河の支流になっていました.氷河時代の終わりとともに大陸と切り離されましたが,氷河時代の生物は湾の奥深くに入り込んで生き残り,日本で類を見ない特別な海になりました.有明海そのものが生きた化石(日本の中に残された大陸)といえます.なかでも典型的なのは粘土を主体とする軟泥質の干潟で,有明海最北部(佐賀県側)と,諫早湾に分布しています.

 最近の研究によれば,この粘土は氷河時代にいまの有明海底に堆積した土砂から,氷河時代の終了後,潮の上げ下げ(暴風による大波も当然考えられる)によって洗い出された歴史的な産物だということが判ってきました.


諫早湾を取り巻く地形

 諫早湾の北西には多良(たら)山系があります.諫早湾流域の最高峰は五家原岳(ごかはらだけ1057m)です.

 南東側には雲仙の普賢岳を主峰とする島原半島があります.諫早湾流域の最高峰は吾妻岳(あづまだけ870m)です.そのすぐ南,千々石町の北縁沿いに活断層である千々石断層があり,落差300m前後の急崖となって南が落ちています.この断層は千々石湾北岸から島原市まで20km以上の長さをもっています.

 南西側は有喜(うき)山系の丘陵が広がっています.

 湾に流入する河川のうち,本明川(ほんみょうがわ)は5km,支流の半造川(はんぞうがわ)も河口から5km以上,有明川は2kmほどの感潮域(潮がさかのぼるところ)をもっていました.二反田川(にたんだがわ)は河口に水門があるので感潮域はありません.ほかの川は急流で感潮域はわずかです.

 湾岸のうち,深海川(ふかのみがわ)から本明川をへて,山田川に至る湾奥は干拓地で満潮時に海面下となる低地です.境川の河口付近は扇状地です.その他は山が海岸まで迫っており,まとまった平坦地はありません.

 諫早湾の干潟でとくに重要な泥干潟は湾奥から4kmほど沖まで広がっていましたが,1997年の締め切りで壊滅状態となりました.締め切り堤防の外側は砂礫(砂や石ころ)が多く含まれており,失われた干潟とは異質です.


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年