裏山流域の洪水シミュレーション1991-1996年

諫早湾の目次
貯留関数法の説明=流量の計算法
流量観測の方法

 流入係数は降った雨のうち,地下に浸透せずに地表にとどまり,洪水に関与する分の割合です.

 相関係数は,シミュレーションで使った貯留関数法の数式 S=KQP (KとPは定数)が現実に合っているかどうかを表わす目安(相関係数が1ならば完全に合っている,0ならば全く違う)で log10Q と log10S の相関(Qは流出量,Sは貯留量)を示します.
(注  S=KQP の両辺の対数をとるとlog10S=log10K+Plog10Q なので log10Q と log10S の関係は直線となる.)

 グラフでは青線がシミュレーション結果,赤線が実際の流量に相当します.

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2日7時まで 流入係数=0.91 相関係数=0.967
2日8時から 流入係数=0.92 相関係数=0.978

 実測値()と水位から推定した流量がうまく合わないのは,流量観測時刻の1時間未満の端数が切り捨てられ,図上で左にずれていること,水位から推定した流量が1時間ごとなので細かい変化が捉えられていないことが原因と考えられます.
 降水量の変化が激しく,ピークが鋭いため,その前後でシミュレーション結果(1時間刻みで計算)が実際の流量変化とうまく合いません.しかし,線の折れ曲がり方は再現されており,また,減水期にはかなり一致しているようです.


流入係数=1.77
相関係数=0.993

 台風の接近に伴う雨です.1991年6月30日と同様に実測値()と水位から推定した流量がずれています.また流入係数が1.77とかなり大きく,強風のため降水量(雨量)が小さめに観測されている可能性があります.そうしたことが影響してか,シミュレーション結果実際の流量変化にうまく合わないようです.

 雨量データはそれほど精密でなく,1割程度の誤差は珍しくありません.誤差の原因としては,風が強いと一度雨量計に入りかけた雨粒が風によって吸い出され,外に出てしまい,雨量が目減りします.実験によれば,受水口の高さが1mの場合,風速4m/sで1割,6m/sで2割,12m/sで5割も少なくなるということです(大田正次・篠原武次 編著 『実地応用のための気象観測技術』を参考にしました).また台風のときは周辺の建物や樹木などが障害物になります.


14日21時まで 流入係数=0.73 相関係数=0.991
14日22時から 流入係数=0.86 相関係数=0.993

 12日から14日まで長時間にわたる降水量流量の変化に対して,ひとつの関係式を当てはめているために,無理が生じて,細部ではシミュレーション結果実際の流量変化にうまく合わないようです.しかし,大局的に見るとおおむね一致しています.


流入係数=0.85
相関係数=0.994

 降水量変化がなだらかなためか,シミュレーション結果実際の流量変化をよく再現しています.これは他の日の例に比べた相関係数の高さにも現れています.


流入係数=0.43
相関係数=0.995

 1993年7月と同様に降水量変化がなだらかで,シミュレーション結果実際の流量変化をよく再現しています.流量そのものが小さいことも関係しています.

2日11時まで 流入係数=0.78 相関係数=0.992
2日12時から4日18時まで 流入係数=1.01 相関係数=0.904
4日19時から 流入係数=1.43 相関係数=0.978

 長期間にわたるため,流入係数が変わっています.降水量が激しく変化しており,細部には無理が現れています.とくに最後のあたりでうまく適合しません.しかし全体的に,上下の変動の様子がかなり再現されています.


流入係数=0.93
相関係数=0.985

実測値()と水位から推定した流量およびシミュレーション結果は細部の違いがあるものの,おおむね一致しています.


流入係数=0.71
相関係数=0.980

 最後のピークの部分でシミュレーション結果実際の流量変化がうまく合いません.

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このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 2000年