流量観測の方法

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建設省実測データによる検証

 建設省は裏山・埋津・琴川橋の各流量観測所(地図を見る)で流量観測をおこなっています.ここではその方法について紹介します.

川の断面と流量

 流量は流れの断面積流速掛け合わせて求められますマニングの式のページ 「流量と流速・流積」の項目を参照).川の流速は水深の違いのため低水路(いつも水が流れているところ)のほうが高水敷(洪水の時だけ水が流れるところ)よりも速くなります(図参照).
 このため観測では流れの断面を図のA・B・Cのように(場合によってはさらに細かく)区分し,それぞれ測定して別々に求めた流量を合計するという方法をとって,精度を上げるようにしています.

流速の測定

 流速は洪水時と平常時で観測方法が違います.
 洪水時は浮子(ふし,浮きのこと)を投げ入れ,流れる距離を時間で割って求めます.実際にはあらかじめ決められている二つの断面(図の第一断面と第二断面)の間を流れるのに何秒かかるか測定します.この場合,流れの表面と内部で流速が一様でないので,更正係数というものを掛けてA・B・Cそれぞれの断面内の平均値を算出します.平常時は流速計というプロペラ式の機械で測定します.

断面積の測定

 断面積も洪水時と平常時で測定法が違います.
 洪水時には第一断面・第二断面それぞれのA・B・Cで水位を観測し,(平常時に測量した)断面の形状とあわせて第一断面と第二断面それぞれでA・B・Cの断面積を求めます.さらに第一断面と第二断面を平均したA・B・Cの各断面積を求めます(第一断面のAと第二断面のAとを平均,B,Cも同様).
 平常時にはものさしを使って水深を直接測定し,細分した各部分の幅(これも直接測定)を掛けて断面積を求めます(低水路Aの断面をさらに細分して流速と水深・幅を測定します).

写真は裏山水位流量観測所の水位標

埋津水位流量観測所の写真にリンク

水位・流量相関式の決定

 以上のとおり流量の観測は人手によって行なわれ,とても面倒なので,一年を通じて連続的に行なうのは無理です.そこで流量と同時に水位を観測して,両者の関係式を決めておき,あとは無人観測で得られた水位を流量に換算するという方法が用いられます.両者の関係式は時とともに変化するので,ときどき観測による修正が必要です.

参考 堰を利用した流量観測

 堰では支配断面というものが生じ限界流不等流計算のページ 「常流・射流・限界流」「支配断面」の項目参照)という流れになります.限界流では断面の形状がわかっていれば,水深から流量を計算することができます(水深と流量は1対1の対応になります).
 この方法は本明川では使われていません.しかし簡単で便利なので,小規模な流れの流量を観測するのに用いられることがあります.

マニングの式を応用した流量の推定

計算の実例

 洪水の後で浸水痕跡(水面の跡にごみが付着して残る)をもとに,流量を推定する方法があります.これは流れの方向にそって少し離れた2地点で浸水痕跡の高さ(基準面は任意)を水準測量し,その高低差を求め,これを両地点間の距離で割って水面勾配を計算します.さらに流れの方向に直角な断面形状を測量し,浸水痕跡の高さと総合すると流れの断面積(流積)や潤辺径深がわかります.また,河床や地表の状態から粗度係数を推定します.
 これらをもとにマニングの式を用いて流速を計算し,これに流積を掛けると流量を推定できます.この方法では精度の高い値は出ませんが,痕跡さえあればどこでも測定できるので便利です.用語などはマニングの式のページ を参照ください.


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年