水位の収斂の原因説明図

諫早湾の目次
水理学による検証
マニングの式

 図は川の縦断面を表わしています.右端が河口です.流量が同じ場合,河口での水位(便宜的に潮位と同じと考えておきます)が変化すると,それに対応して水面勾配が変化します.

 河口の水位が低ければ水面勾配は大きくなり,河口の水位が高ければ水面勾配は小さくなる(マニングの式のページの最後のあたりを参照)という変化をします.図の青線(水面を表わす)を,右端から左に向かって追いかけると3本の線どうしが互いに接近して,一点に集まる(収斂=収束)ような形をしています.この現象は洪水時に顕著に現れます.

 このため,諫早市街地(河口から離れている)の本明川水位は洪水時の場合,河口の満潮・干潮に影響されません.ですから堤防で諫早湾を締め切って中の水位をどんなに下げても,市街地の川の水位は下がらず,洪水対策にはまったく役に立ちません.農水省や長崎県が大雨のたびに「潮位に関係なく,調整池の水位を低く保った」と強調したところで,諫早の街にとっては,何の恩恵もありません.

 川の水位を計算するときは,特殊な場合を除き,流量と河口の潮位および河道の形状をもとに,少しさかのぼった地点の水位を求め,その地点からさらにさかのぼるという形で上流に向かって順々に進めていきます.このような計算を不等流計算といいます(たいへん面倒な計算です).


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http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年