有明海漁民・市民ネットワーク

緊急声明:国の基金案の有明海3県漁連への押しつけについて
その卑劣な策動に抗議する

 有明海漁民・市民ネットワークでは、2023年10月31日に農水省が佐賀・福岡・熊本3県の漁業団体幹部を集めて、3月の農水大臣談話について賛同するよう求めたことに対し、以下の緊急声明を11月4日に公表しました。

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2023年11月4日

緊急声明:国の基金案の有明海3県漁連への押しつけについて
その卑劣な策動に抗議する

有明海漁民・市民ネットワーク

 本年10月31日、農水省は、佐賀・福岡・熊本3県の漁業団体幹部を集め、本年3月の農水大臣談話について文書で賛同するよう求めました。諫早湾開門確定判決に基づく開門請求権を有する原告漁民側は、この農水大臣談話を受けた3月から話し合いを進める逆提案をしていますが、農水省は「非開門前提」の姿勢を取り続け返答を留保しています。団体幹部にはカムフラージュした説明をしているかもしれませんが、今回の漁業団体への要請は、非開門前提の基金案への賛同を求める内容と言えます。そして、こうした一連の動きは、原告漁民との話し合いに先立ち、漁業団体の賛同を得て、原告漁民を追い詰めることを狙った国の策動に他なりません。

1.非民主的なスピード決着を押しつける卑劣さ
 本来、漁業団体に賛同を求めるのであれば、所属する漁業者に国の基金案を説明し理解を求める場が必要なはずです。その上で、漁業者が各支部単位で意見交換し、その積み上げが漁連の意見として集約されなければ、民主的な合意形成とは言えません。
 ところが、農水省は、一般漁業者に考える暇を与えず、団体幹部との談合で決着を図ろうとしています。佐賀県有明海漁協は持ち帰りましたが、それでも国の要請から間もない本日に運営委員長支所長会議を開き意見集約を図るとのことです。一般漁業者は蚊帳の外で強引に進めることに変わりありません。おそらく、農水省はスピード決着のシナリオを立てていたのでしょう。非民主的で卑劣な農水省の策動に対して、私たちは厳重に抗議します。

2.漁業団体を欺く卑劣さ
 農水省の説明は「本年3月の農水大臣談話への賛同」のようですが、談話では「非開門前提の基金案」とは明示していません。そんなことからか、佐賀県有明海漁協の西久保組合長は「有明海の再生を優先するべきだとの声もある」とコメントしています。しかし、基金案は、従来の有明海再生事業の手切れ金のような性格のものであり、国は非開門さえ確定させてしまえば、再生事業もそこで終わりにするはずです。有明海再生にはむしろマイナスです。基金案が本当に有明海再生に資するのであれば、その執行と効果を確認した後で非開門に同意すればいいことです。
 そもそも、漁業団体がこのタイミングで基金案への賛否を問われなければならない理由はありません。原告漁民側が同意しなければ、基金案の発動はできないのですから、農水省に対しては、原告漁民との話し合いで合意が得られてから出直して来いと伝えればよいのです。
 漁業団体に正確な情報を与えず、有明海再生を願う気持ちを逆手に取って、漁業者の分断を図ろうという農水省の卑劣さを許すことはできません。

 以上、私たちは、農水省の卑劣な策動に厳重に抗議します。


追伸)メディアのみなさまへ
 本年3月の請求異議訴訟最高裁決定を受けて、「開門を巡る司法判断が非開門で統一された」との記事を多く見かけます。しかし、決定は開門を命じた確定判決の強制執行力が排除されただけで、開門義務は引き続きあります。そのことは国会答弁でも確認されています。よって、「司法判断は非開門で統一された」との記事は事実のねじ曲げであり、報道として許されない表現です。実際、そうした事実ねじ曲げの記事が国の世論操作を後押しする結果になっており、漁業団体の意思決定にも悪影響を与えています。
 これまでにも度々指摘してきたところですが、今後は「司法判断は非開門で統一された」とは表現しないようよろしくお願いします。
 また、国民の知る権利を守る立場から言えば、農水省の策動の裏側を明らかにする報道が求められます。併せてよろしくお願いします。