下のアニメーションは洪水時と非洪水時のそれぞれについて,満潮時と干潮時の本明川の流れの状態を示しています.非洪水時には諫早湾の潮位の変化が直接,市街地に及びます(潮がのぼる).それに対して洪水時には,大量の雨水が殺到して河道の抵抗が生じます(河口水位が低いほど,河口近くの流れが浅く,狭くなるため,流れが一点に集中して抵抗が大きくなる).そのため流れに傾斜が生じて(河口水位が低いほど抵抗により傾斜が大きくなる)潮位変化を打ち消します.これらの関係をあらわすのに有名なマニングの式というのがあります.
こうして洪水時の潮位の影響は河口からさかのぼるにつれ次第に小さくなり,河口から約2kmで消滅します.つまり河口で潮位の影響により変動する水位は,川をさかのぼるにつれて,一定の水位に近づき(収斂=しゅうれん(注)といいます)2km地点で潮位と無関係になるので,潮位の影響が市街地(河口から3.5km以上離れている)に及ぶことはありません.収斂する地点は洪水が激しくなるほど河口寄りに移動します.また河道が狭いほど河口寄りになります.
市街地よりも下流で収斂が起こるため,諫早湾を締め切って河口水位をどんなに下げてみても,市街地での本明川氾濫防止には何の効果もありません.調整池の容積をいくら広げても無関係です.
(注)数学用語で,ある値に限りなく近づくことを「収斂(収束)」といいます.今では「収束」と呼ぶのが普通ですが,ここでは『諫早水害誌』にならい「収斂」と呼んでおきます.
例) x を限りなく大きくすると 1/x は 0 に「収斂(収束)」する.
参照 収斂に関する『諫早水害誌』の記述 建設省実測データによる検証 水理学的計算による検証結果
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このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。
http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年