1999年7月23日の諌早集中豪雨で気象庁諫早アメダスでの1時間降水量101mmが観測史上最大であったことを理由に,国や長崎県は「諫早湾締め切りのおかげで被害が最小限で済んだ」との宣伝を繰り返しています.
しかし,観測史上最高だったのはアメダスの観測所という“点”であり,湾締め切りで防災効果があるとされている湾岸低平地流域から離れた場所での話です.湾周辺に目を向ければ,これに匹敵するか上回る豪雨は過去に何回も観測されています.そのうちのいくつかは低平地流域を“直撃”しています.
上にあげた「防災効果」の宣伝は,これらの事実をまったく考慮しておらず,誤った論理といえます.
ここでは諫早湾周辺で1983年以降1時間降水量80mm以上が観測された事例を紹介します.降水量の数値・時刻は周辺観測点との整合性を考慮し,当館の判断で一部修正・決定しました.場所は原則として観測所の所在する市町名で表示しました.
日付をクリックするとその日の降水量分布図が開きます.
日時 | 場所 | 1時間降水量 |
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1985年8月31日7-8時 | 五家原岳 | 107 |
1985年9月22日19-20時 | 諫早市● | 91 |
1988年5月3日15-16時 | 愛野町●※ | 116 |
1988年7月17日19-20時 | 森山町● | 89.5 |
1990年6月15日5-6時 | 小長井町 | 92.5 |
1991年6月30日17-18時 | 国見町 | 88 |
1995年7月11日11-12時 | 小長井町 | 89 |
1996年7月3日12-13時 | 雲仙仁田峠 | 134 |
1999年7月23日8-9時 | 諫早市 | 123 |
●のついたものは豪雨の中心が諌早湾岸低平地流域にあります.
※1988年5月3日については 荒生公雄・東原英行・松本勝也(1990)1988年5月3日の島原地方における豪雨の降雨特性,長崎大学教育学部自然科学研究報告(42) より引用.
このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。
長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 2000年