測量資料の存在場所

諫早湾の目次
客観資料の存在場所

国土地理院

 日本の測量業務の総元締めです.すべての測量のもとになる基本測量を行なっています.全国に水準点を設置して0.1mm単位で標高を測量しています.また,全国に三角点を設置して,経度・緯度・標高を測量しています.さらに,空中写真を撮影して,地形図を作成しています.
 これらの測量成果は誰でも入手できます.地形図は大きな書店で販売されています.旧版は(軍事機密だった戦前の地図も)国土地理院またはその出先の地方測量部に申し込めば入手できます(所定様式の申請書に収入印紙を貼る).空中写真は(旧版を含め)地図代理店を通じて購入できます.注文を受けつけてから写真を焼き付けるので少し待つ必要があります.
 水準点や三角点の標高・経緯度,これらの基準点の番号・名称と位置を地形図上に表示した配点図,基準点を現地で探し出す際の手がかりとなる点の記などは国土地理院や地方測量部に申請すると交付してもらえます(収入印紙を貼った申請書を出す).
 自分で測量を行なうときは,これらの基準点を使用するわけですが,手もとのデータが古いと誤った結果を出す恐れがあるので,事前に,使用する基準点とその標高・経緯度の交付年月日を国土地理院長に申請して承認を得ることが測量法などに定められています.これはあくまでも技術上の理由から行なわれるもので,国土地理院はいかなる理由があっても申請した測量を妨げてはなりません.
 なお,国土地理院以外が行なう測量で費用の全部または一部を国または地方公共団体が支出するものを公共測量といいます(一部例外があります).公共測量は高い精度が要求され,基本測量に準じた取り扱いを受けます.

建設省

 建設省では国道などの用地の測量や河川の測量などを(実際には測量会社が)行なっています.そのうち,防災問題に関係が深い河川関係の測量を紹介します.
 もっとも入手しやすいのは工事事務所や河川ごとに作られている管内図です.これには観測所の位置と名称,一級河川の河口からの距離が記載されています.河川の管内図にはさらに堤防の整備状況や簡単な縦断面図・横断面図のが掲載されています.
 大臣管理区間については詳細な縦断面図横断面図平面図が作られています.本明川の場合,河口から7.0km,半造川で本流合流点から3.1km,福田川で本流合流点から1.0kmの区間が大臣管理区間です.両岸には100mおきに距離標(河川測量の基準点)が設置され,両岸の距離標どうしを結ぶ線に沿って,横断面図が作られています(川の中心線をおおよそ100mごとに区切り,そこを直角に横切る線上に距離標を設置してあるので,厳密に言うと両岸では100mおきにはなっていません).

縦断面図は横軸に河口からの距離,縦軸に標高をとり,河床高・両岸の堤防高などを折れ線グラフで表したものです.さらに建設省独自に撮影した空中写真を使って2500分の1の平面図を作成しています.

農林水産省

 諫早湾の周りには諫早湾干拓事務所が水準点を設けています.左写真はそのひとつ(直径約10cm,真上から見たところ)で,E-1という名称がついています.1996年秋から1997年春にかけて地盤変動調査を実施しています.また土地改良事業に伴う測量を行なっています.

地方機関

 地方機関の測量でとくに重要なのは基本図という精密な地図です.最近ではほとんどの市町村が2500分の1の基本図を作成,販売しています.これは空中写真をもとに作っているので標高には数十cmの誤差があり,洪水を問題にするときは注意が必要です.一色刷りで建物の1軒1軒や細い路地まで記載されているので,現地調査をして,いろいろ記録するときに,きわめて役に立ちます.地形図と違って経緯度ではなく,km単位で表わした平面直角座標系(日本に19系あります.長崎県で使われる第 I 座標系は北緯33度00分,東経129度30分を原点としています)を使っています.
 基本図の作成や河川管理あるいは地盤変動調査のために地方機関独自に基準点を設置している場合があります.これらは国土地理院の助言のもとに公共測量で位置や標高が測量されていますから,調査したい場所の近くに国土地理院の基準点がない場合,利用価値が高いでしょう.ただし,平野では地盤沈下で年々標高が下がっている場合があり注意が必要です.

このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年