諫早湾干拓を推進する人たちは「諫早湾の干潟は軟弱で既設堤防を嵩上げすると倒壊する.だから高潮を防ぐには諫早湾を締め切るしかない」といいます.また,「佐賀の干潟は砂質で粒子が大きく地盤が強い.諫早とは違う」ともいいます.
しかし,佐賀県でも軟弱地盤の悩みは同じで,干拓地の道路を車が走ると地面が上下に振動し,ゆさゆさと踊るような揺れを体に感じます.堤防の沈下もありますし,従来の堤防が地震で壊れる恐れがあるため,対策が取られています.
鹿島市北部以東の佐賀県内有明海干潟はどこも泥質で,一歩足を踏み込むと瞬時にめり込んでしまいます.上の写真に見られるつぶつぶは砂ではなく,ゴカイの巣穴やそこから吐き出された泥の塊です.干潟は軟らかく手で簡単に掘れます(左上.写真下部の定規の長さは19cm).右上写真中央の棒状の物体は泥を採取する時に使った「さじ」(写っている部分の長さ約15cm)で,スケール代わりに突き刺すと自重のため泥に沈んでいます.
鹿島海岸末増篭の堤防不等沈下建設省鹿島海岸末増篭(すえますごもり)排水機場前の堤防です.不等沈下により7cmの段差が生じています. |
写真上段 堤防天端(てんば)の右が海,左が陸
写真下段 陸側の盛り土
建設省東与賀海岸の堤防は天端高7.5m,上段道路面6.0m,中段道路面3.0mで,潮位5.0m以上の高潮に対応しています(いずれも東京湾平均海面を基準).ところが堤防の耐震性が不足していることが分かり,1997年から耐震工事が行なわれています.
海側50mの幅の中に松杭をたくさん打ちこみ,その上に石を敷き詰めています.今後さらにそのうえに石の重しをかぶせ,最終的には堤防天端から緩やかな斜面を作る計画です.
一方,陸側では従来の水路を内陸に移動させ,堤防から50m程度の幅で盛り土をかぶせ,重しにしています(建物や堤防中段道路を目印に左右の写真を比較すると分かりやすい).従来の地面の標高はほぼ0mです.
これらが全部完成すると堤防の高さに対して幅が広い緩傾斜堤防となります.
このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。
長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 1998・2000年