排水門管理規定にもある全開流出

諫早湾の目次
水門の流速

 諫早湾の水門を開けると大変なことが起きるかのような宣伝がなされています.しかし,諫早湾干拓事務所にある国営諌早湾干拓事業調整池排水門工事中管理規定では,水門内外の水位差が0.80mを超え,調整池水位が-0.50mを超えるときなどに,全開流出させることを規定しています.この規定があるということは,「水位差によって速い潮流が発生し危険」,「漁場が荒れる」という論理が,干拓を進める張本人の間でも,明確に否定されていることを証明しています.

全開流出の定義

 規定の条文(表の下方に掲載)は複雑で難解ですが,要約すれば以下の表のような形になります.

表中で「水位差」とは調整池水位から外潮位を引いた値を意味します.「内水位」とは調整池の水位のことです.

流入量 1000m3/s超の場合

 水位差 0.20m未満水位差 0.20〜0.80m 水位差 0.80m超
外潮位
 上昇中その他
内水位
-0.50m超
全閉ゲート下端を
内水位の0.50m下
ゲート下端を
内水位の1.20m以上,上
(全開流出)
内水位
-1.00〜 -0.50m
全閉貯水量増加中
貯水量減少中内水位を-1.00〜 -0.50mに保つ.
内水位
-1.00m以下
全閉

流入量 1000m3/sを超えたあと1000m3/s以下になった場合

 水位差 0.20m未満水位差 0.20〜0.80m 水位差 0.80m超
外潮位
 上昇中その他
内水位
-0.50m超
全閉ゲート下端を
内水位の0.50m下
ゲート下端を
内水位の1.20m以上,上
(全開流出)
内水位
-1.00〜 -0.50m
全閉流入量200m3/s以上ゲート下端を
内水位の0.50m下
流入量200m3/s未満になったとき 第4条(非洪水時)の操作
内水位を-1.00〜-0.50mに保つ.
内水位
-1.00m以下
全閉


国営諌早湾干拓事業調整池排水門工事中管理規定

第2章 排水門の操作の方法等

(洪水時における操作の方法)

第3条 諌早湾干拓事務所長(以下「所長」という。)は、南部排水門及び北部排水門の上流側の量水標において測定した調整池の水位(以下「内水位」という。)、南部排水門及び北部排水門の海域において測定した諌早湾の潮位(以下「外潮位」という。)並  びに南部排水門及び北部排水門のゲートの開度から換算した調整池流入量(以下「流入量」という。)が毎秒1000立方メートルを超え、さらに増加するおそれがあるとき は、次の各号に定めるところにより排水門を操作するものとする。

  内水位が外潮位より低い時又はその水位差が0.20メートル未満のとき又は内水位が標高−1.0メートル以下となるときは、排水門の全てのゲートを全閉すること。

  内水位が外潮位より高くその水位差が0.20メートル以上で、かつ内水位が標高−0.50メートル以下の場合において、南部排水門及び北部排水門のゲートの開度  から換算したゲート放流量(以下「放流量」という。)が流入量を上回るときは、内水位を標高−1.00メートルから−0.50メートルの間に保つこと。

  内水位が外潮位より高く、かつ外潮位が上昇中でその水位差が0.20メートルから0.80メートルの間にある場合において、内水位が標高−0.50メートルを超えているときは、排水門の全てのゲートを内水位より0.50メートル下回る開度とすること。又、内水位が外潮位より高く、かつ外潮位が上昇中でその水位差が0.20メートルから0.80メートルの間にある場合において、内水位が標高−0.50メートル以下で、放流量が流入量を上回るよう操作することができないときは、排水門の全てのゲートを内水位より0.50メートル下回る開度とすること。

  内水位が外潮位より高くその水位差が0.20メートル以上の場合において、前第二号から第三号による操作を行う場合を除いては、排水門の全てのゲートの下端高を内水位より1.20メートル以上上回るよう操作すること。

  前第二号から第四号による操作中において、内水位と外潮位との水位差が0.20メートル未満となったときは、排水門の全てのゲートを全閉すること。

  前第一号及び第五号に基づき排水門の全てのゲートを全閉している場合において、内水位が外潮位より0.20メートル以上上回ったときは前第二号から第四号による操作を行うこと。

.所長は、前項の操作を行っている場合において、流入量が毎秒1000立方メートル以下になったときは、次の各号に定めるところにより排水門を操作するものとする。

  内水位が外潮位より低い時又はその水位差が0.20メートル未満のとき又は内水位が標高−1.00メートル以下となるときは、排水門の全てのゲートを全閉すること。

  内水位が外潮位より高く、その水位差が0.20メートルから0.80メートルの間で、かつ内水位が標高−0.50メートルを超えている場合において、外潮位が上昇中のときは、排水門の全てのゲートを内水位より0.50メートル下回る開度とすること。

  内水位が外潮位より高く、その水位差が0.20メートル以上で流入量が毎秒200立方メートル以上のときで、かつ内水位が標高−0.50メートル以下となる場合においては排水門の全てのゲートを内水位より0.50メートル下回る開度とすること。

  内水位が外潮位より高く、その水位差が0.20メートル以上の場合において、前第二号及び第三号による操作を行う場合を除いては、水門の全てのゲートの下端高を内水位より1.2メートル以上上回るよう操作すること。

  第一号から第四号による操作中において内水位が標高−0.50メートル以下となり、かつ流入量が毎秒200立方メートル未満となったときは、第4条に定める操作を行うこと。

.所長は、前2項の操作においては、排水門の上流及び下流海域の流速に急激な変動を生じさせないようにするものとする。

(平水時における操作の方法)

第4条 所長は、流入量が毎秒1000立方メートル以下であるときは、次の各号に定めるところにより排水門を操作するものとする。

 内水位が外潮位より低い時又はその水位差が0.10メートル未満のとき又は内水位が標高−1.00メートル以下となるときは、排水門の全てのゲートを全閉すること。

 前号により排水門の全てのゲートを全閉している場合において、外潮位が内水位より0.10メートル以上下回ったときは、次の潮汐の下降により排水可能となる時点において、内水位が標高−0.50メートル以下となるよう排水門のゲートを操作すること。

 第一号により排水門の全てのゲートを全閉している場合において、次の潮汐の下降により排水可能となる時点における内水位が標高−0.50メートルを超えることが予測されるときは、排水門ゲートからの放流中における内水位を標高−1.00メートルに保つよう排水門のゲートを操作すること。

 第二号の操作により、排水門ゲートからの放流中において、内水位が標高−1.00メートル以下となるときは、排水門ゲートからの放流中における内水位を標高−1.00メートルに保つこと。


    

国営諌早湾干拓事業調整池排水門工事中管理細則

 (洪水時における操作の方法)

第4条 規定第3条第1項に定める操作については、次の各号に定めるところによるものとする。

  排水門のゲートを開くときは、南部排水門ゲートと北部排水門ゲートを同時に操作するものとし、南部排水門ゲートの操作順序は南部1号ゲート、南部2号ゲートの順とする。又北部排水門ゲートの操作順序は北部3号ゲート、北部4号ゲート、北部2号ゲート、北部5号ゲート、北部1号ゲート、北部6号ゲートの順とする。

  排水門のゲートを閉じるときは、南部排水門ゲートと北部排水門ゲートを同時に操作するものとし、操作の順序は前号と逆の順序により操作すること。

  外潮位の上昇により排水門のゲートを全閉するときは、外潮位が内潮位より0.20メートル低い時点までに全閉操作が終了するよう操作すること。

  規定第3条第1項第二号の操作は、以下の各号によること。

   規定第3条第1項第六号に基づく操作は、放流量が流入量を上回る直近のゲート開度とすること。

   イ号及びハ号に定める操作の結果、内水位が上昇したときは、排水門の全てのゲート開度を0.30メートルづつ開くこと。

   イ号及びロ号に定める操作の結果、内水位が下降したときは、排水門の全てのゲート開度を0.30メートルづつ閉じること。

   イ号及びハ号による操作中における、排水門ゲートの最少開度は、0.30メートルとすること。

   ハ号による操作において、全門のゲート開度が0.30メートルとなった時点において、内水位が下降したときは、前第二号に係わらず逐次1門づつ全閉すること。

   前号による操作において、内水位が上昇したときは、前第一号に係わらず全閉中の排水門ゲートを逐次1門づつ開度0.30メートルまで開くこと。

  規定第3条第1項第三号の操作は、内水位に追随して0.10メートル毎に排水門のゲートを操作すること。

  規定第3条第1項第四号の操作によるゲート下端高は、以下の各号によること。

   内水位が標高−1.00メートルを超え、標高0.00メートル以下にあるときはゲート開度を5.20メートルとすること。

   内水位が標高0.00メートルを超え、標高1.00メートル以下にあるときは、ゲート開度を6.20メートルとすること。

   内水位が標高1.00メートルを超え、標高2.00メートル以下にあるときは、ゲート開度を7.20メートルとすること。

   内水位が標高2.00メートルを超えたときは、ゲート開度を全開とすること。

 規定第3条第2項に定める操作については、次の各号に定めるところによるものとする。

  規定第3条第2項に定める操作において、排水門ゲートの操作順序は前項に準じて操作すること。

  規定第3条第2項第二号及び第三号の操作は、前項第五号の操作に準じて行うこと。

  規定第3条第2項第4号の操作は、前項第六号の操作に準じて行うこと。

水門の流速


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

長崎自然史仮想博物館 制作・著作 布袋 厚 2001年