ひとことに「雨量」といってもご覧のとおり,いろいろな定義があり,たくさん並んでいるのを見ただけで,頭が混乱しそうです.しかし定義をしっかり確認せず,数字ばかり見ると見当違いの誤りを引き起こす場合があります.実際に,1997年春の諫早湾締め切りをめぐる防災論争の中で,日雨量と時間雨量の混同が原因となって,無意味な非難合戦が繰り広げられました.
ある時間内に降った雨が地表の水平な平面上にたまったときの水の深さを雨量または降雨量といいます.単位は通常,mmで表わします.他の場所への流出,他の場所からの流入,蒸発,地面への浸透があってはいけません.
雨のほか雪・あられ・ひょうなど固形の降水を融かした水を合わせて,雨と同様に測ったものを降水量といいます.したがって,雨量は降水量の一部です.
ある時刻から24時間に降った雨の量を24時間雨量といいます.
現在の気象庁の定義では24時間雨量のうち,ある日の0時から24時までの24時間雨量を日雨量といいます.
気象庁以外ではある日の9時(午前9時)から翌日の9時までの24時間雨量を日雨量という場合が多いようです.
ある時刻から1時間の間に降った雨の量を時間雨量といいます.わかりやすいように1時間雨量ということもあります.
時間雨量のうち,1時00分−2時00分,2時00分−3時00分,3時00分−4時00分,というように毎時00分を起点にした雨量を正時時間雨量または正時1時間雨量といいます.
ある時刻から10分間に降った雨の量を10分間雨量といいます.
10分間雨量のうち,毎時00分,10分,20分,30分,40分,50分のいずれかを起点にした雨量を正時10分間雨量といいます.
総雨量はいろいろな意味で使われています.任意の時刻から任意の時刻までを指す場合もあれば,降り始めの時刻から降り終わりの時刻まで(あるいは降り始めから任意の時刻まで)の雨量をさすこともあります.さらに,雨の途中で短時間の止み間があったとき,「降り終わって,ふたたび降り出した」と考えることもあれば,「降り続いた」と考えることもあり,ますます難しくなります.
瞬間的な雨の強さを1時間あたりに換算した雨量を降雨強度といいます.単位はmm/h(ミリメートル毎時)です.1分間の雨量を1時間あたりに換算するのが基本です.
たとえば1分間に2.5mmの雨が降ったときは 2.5×60=150 (mm/h) となります.
雨量には必ず,始めと終わりという2つの時刻があります.観測データで○月○日×時の雨量と書かれている場合は終わりの時刻をさしており,10分間とか1時間というように時間の長さが併記されています.
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http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 2000年