雨量の観測

諫早湾の目次

雨量データの見方 見出し

「雨量」の定義
雨量データを読むときの注意

雨量計の規格

 雨量の定義は水平な平面上にたまったときの水の深さですから,底が水平な平面で,壁が水平面に対して垂直になっている容器を使えば観測できます.中に貯まった水の深さをものさしで測定すれば良いのです.  しかし

(1) ものさしの表面に水が吸い付いて(表面張力),正確な測定が意外に難しい.
(2) 容器が小さいと,強風のときに雨が入りにくく,誤差が生じやすい.

などの理由から,実際の雨量計には直径20cmの円筒形の容器を使うことになっています.直径が20cmですから半径は10cmで,底面積は
10 2π=10×10×3.14=314(cm2
となります.したがって,1mm(=0.1cm)の雨が降れば,この容器に貯まる水の量は
314×0.1=31.4(cm3
となります.つまり,容器にたまった水の体積をcm3単位で測定して,31.4で割ってやると mm に換算できるわけです.実は31.4cm3を基準に目盛をつけたメスシリンダーが雨量ますなのです.

自記雨量計

 1時間雨量や10分間雨量の観測をおこなうとき,1日中,昼も夜もつきっきりで観測するのはたいへんですし,毎回雨量ますに移しかえる間に逃してしまう雨も無視できなくなります.そこで,自動的に雨量を記録するために自記雨量計が考案されています.
 自記雨量計には貯水型自記雨量計転倒ます型自記雨量計があります.

方式貯水型雨量計転倒ます型雨量計
原理  雨を貯水タンクに貯め,タンクの中にある浮き(フロート)に連動したペンが動いて,雨量が紙に記録される.
 雨量計に入った水を受ける転倒ますに0.5mmまたは1mm分の水がたまると,水の重みで転倒ますが動いて電気信号を発し,この信号を記録する.
長所  0.5mm(または1mm)未満の微量の雨や強度の変化が忠実に記録できる.
 電気系統がないので,停電や断線などを気にする必要がない.
 貯水タンクの水量を直接測るので精度が高い.
 電気信号を記録するので,遠隔観測やコンピュータへの自動入力が容易.
 装置が比較的小型・単純で扱いやすい.
短所  記録装置が雨を受ける円筒と一体になっており,遠隔観測やコンピュータへの自動入力には変換装置の追加が必要.
 装置が比較的大型・複雑で扱いにくい.
 0.5mm(または1mm)ごとに計測されるので,微小な変化が記録できない.
 電気系統があるので,停電や断線などに注意する必要がある.
 転倒ますが正確に(0.5mmあるいは1mmごとに)動かないと精度が落ちる.

 以上のような理由で,現在使われている雨量計の大半は転倒ます型自記雨量計で,精度管理のために雨量ますを使った人手による観測が併用されています.

雨量観測上の注意

雨量計の設置

 雨量計のまわりに雨をさえぎるような障害物や雨を跳ね返すような物体があったり,風当たりが強かったりすると正確なデータが取れないので,これらの影響が最小限のところを選んで設置する必要があります.

 雨量計が傾くと雨を受ける面積が狂い,また,転倒ます型自記雨量計では転倒ますの動きが不正確になりますから,雨量計は水平に設置する必要があります.

写真は諫早市南部にある転倒ます型雨量計

保守管理

 雨量計にごみが入ってないか,電気系統は正常か,転倒ますの動きはよいかなど,日常的に管理する必要があります.とくに記録装置の時計の遅れ進みはデータに大きな影響が出るので,雨が降り出したら頻回に見ておくことが重要です.また,転倒ます型雨量計の観測では雨量ますを使う方式(普通雨量計)などと併用し,両者の値が一致しているか見ておく必要があります.

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このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 2000年