流量の計算法

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降水量をもとに計算した水位と実測水位・潮位を比較する方法 流域の平均雨量の計算法

いろいろな方法

 雨量と流量の関係は非常に複雑で,流域内の土地の起伏や地表の状態が不均等なため,精密に計算することは事実上不可能です.しかし,そう言ってばかりでは洪水の予測ができず河川計画も立てられないので,いろいろなモデルを考案して,関係式を求める試みが続けられています.ここでは有名な方法をいくつか紹介します.

(興味がある方のために少し詳しく書きました)

合理式(ラショナル法)

 ピーク雨量を r(mm/時) ,流出係数(地中への浸透を考慮するため)を f ,および流域面積を A(km2) とするとピーク流量 Q(m3/秒) 

Q =(1/3.6)・f r A
公式の導き方Q&AのQ5に示してあります.)

で求められます.これは雨水(浸透した分を除く)がそっくりそのまま,いっせいに流れ出すと考えるものです.浸透性が高いと流出係数は小さくなります.狭い流域での計算で簡便法としてしばしば用いられます.雨量が多くなると流出係数が大きくなる,広い流域では水の移動に時間がかかるなどの理由で,誤差が大きくなりますから注意が必要です.

単位図法

 ある時間帯に降った雨が流出するさいに,次の時間帯,そのまた次の時間帯と,時間帯ごとに流出の比率がきまっているという考え方です.
 たとえば1時間に降った雨が,次の1時間で4割,その次の1時間で3割,その次の1時間で2割,その次の1時間で1割と,わかれて流出するとします.このような条件下で,3時間の降雨があり,1時間ごとの雨量が10mm,30mm,20mmだったとします.また1mmの雨量に相当する水量を 1 (単位は何でも良い)とすると流出のパターンは

1時間目2時間目3時間目4時間目5時間目6時間目7時間目
降水10mm4321  
 降水30mm12963 
  降水20mm8642
流出量415191372

となります.降水量の右側にある4個の数字の合計が雨量に等しく,比率がどの行でも 4:3:2:1 となっていることに注目してください.時間経過による流出のパターンを決めるのにいろいろなやり方がありますが,ここでは省略します.単位図法は『諫早水害誌』の流量計算で用いられています.

貯留関数法  貯留関数法による洪水シミュレーション

アニメーション参照(埋津流域の例)  

 流域全体を大きなプールに見たて,中に貯まった水量S(貯留量),そこに開けた穴から単位時間あたりに出てくる水量(これを洪水流量と考える)Q(流出量)との間に一定の関係式が成り立つと考える方法です.貯留量は雨量(地中への浸透を差し引く)から流出量を引いて,その差を累積した値とします.この場合に

S=KQP

という式を当てはめます.KPは流域ごとに決まった定数とします.話が難しくなりますが,横軸に logQ,縦軸に logS をとってグラフを作ると直線になるのが特徴です.
 K,Pを決めるには観測データからグラフを作り,いちばん直線的になるように試行を繰り返し,数値を絞り込む方法(このホームページにある資料では表計算ソフトを利用して最小二乗法という統計学的な手法を用いています)や,地形から理論的に定める方法(諫早湾干拓事務所が洪水シミュレーションで用いています)があります.
 KとPがわかれば,最初の雨量から貯留量が決まり,流出量が導かれるので,次の雨量と組みあわせ,次の貯留量が決まる・・・というように順番に計算を進めていきます.
 ご覧のとおり貯留関数法は計算がたいへん面倒ですが,現実の観測結果との適合性が良いとされ,広く用いられています.


アニメーションが表示されないとき


このページを含む<諫早湾と防災>閉鎖保存版は有明海漁民・市民ネットワーク事務局が著作者から全面的な管理を委ねられ、独自に複製・配布・公開しています。著作者は諫早湾の問題からは手を引いており、質問等は受け付けていません。

http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999年