長崎自然史仮想博物館 QAQ1Q10

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Q10 当初は、どのような目的で干拓事業の計画が始まったのでしょうか.

 最近 話題になっています諫早湾の干拓事業ですが、なぜ、干拓をすることに成ったのでしょうか。
 当初は、どのような目的で事業の計画が始まったのか、知りたいのです。
 きっと、きっちり新聞を読んでいる人には、 笑われちゃいますが、もし、良かったら教えてください。
(2001年01月28日)

A  おおもとの計画は米の増産目的で長崎県知事によって発案され,1952年度に長崎県から農林省(昔は「水産」の字はついてなかった)などに要望が出されたのが始まりです.翌1953年度,農林省直轄事業として「長崎干拓事業」として調査が開始され,1965年工事予算がつきましたが,漁業交渉がつかないまま,1970年度,米余りによって,開田抑制政策(水田を増やさない),減反政策(農家に米の減産を強制する)が始まったため,当初の事業目的は失われました.この時の計画では諫早湾全部を締め切り,内部を淡水化し,その中に内部堤防を作って農地を造成するというもので,今の干拓と基本的には同じやり方です.

 目的を失った「長崎大干拓事業」は同年「長崎南部総合開発計画」(南総計画)と名を改め,工業団地を作るとか,「淡水湖」(いま調整池と言っているものと同じ)をつくって長崎県南部地域の都市用水(上水道水源),灌漑用水を供給するとかいう目的で計画が進められました.このときも,諫早湾を全部締め切る予定でした.当時,淡水湖の水が飲めるかどうかをめぐって,国・県と市民・研究者の間で論争がありましたが,今日の調整池の水質を見れば,答えは明らかでしょう.

 このときも漁業補償交渉が進まず,1973年南総事業は休止となりました.しかし,1975年度には事業再開となり,翌年,県外漁協の同意取り付けのために規模縮小の検討が始まりました.長崎県の担当者が諫早湾内漁協に乗り込み,漁業権放棄が可決されるまで何回も総会をやらせるなどして,最終的に目的を完遂しました.しかし,県外漁協との交渉は進まず,1982年末,当時の金子岩三農林水産大臣によって打ちきりの決定が下されました.

 ところがその直後,今度は「洪水と高潮,低地湛水(たんすい=水がたまること)を防止する総合防災」とのふれこみで,諫早水害(1957年)などを盛んに持ち出して,人命を守る事業であるかのような看板を掲げた「諫早湾防災総合干拓事業」が持ち出され,締切面積を縮小して県外漁協の同意取付けに成功し,「国営諫早湾干拓」として 決定・着工に至りました.

 最初の計画以来,目的はころころ変わりましたが,諫早湾を締め切って淡水化し,土地を造成するというところだけは首尾一貫しています.

Q9  諫早湾干拓の前身である南総(長崎南部総合開発計画)や,さらにその前身の長崎大干拓構想も複式干拓だったのでしょうか?

 干拓はやるとして同時にあの地域の防災対策を、というところから素直に出発すれば、必ずしも複式干拓(館長注を参照)に行きつくとは限らないわけですよね。地先干拓プラス堤防補修プラスポンプ増設といった案もありうるわけだから、防災専門家の検討会議にはフリーハンドで検討を委ねるのが役人の常識的立場だと思います。地先干拓なら面積も狭いから漁協の了解も得やすいはずで、締め切り面積を政治決着する苦労もなかったはずです。

 それなのに役人が作った検討委設置要領では最初から複式干拓の枠内での検討を命じている。その奇妙さに裏に何かがあったのではないかという疑いを感じたまでの話です。(2001年01月08日 東京都 小市民さんより)

(館長注:複式干拓=諫早湾を締め切って淡水化し,その一部をさらに別の堤防で囲んで水を抜き陸地化する方式の干拓)

A  長崎大干拓・南総から一貫して複式干拓です.現干拓は「初めに複式干拓ありき」で,目的がいろいろ変わったにもかかわらず,締め切り面積の縮小と北部排水門の追加以外は基本的に南総の設計を踏襲しています.南総から現計画に変わった当時の県議会議事録を読むと防災上の必要に迫られて現計画が出発してたのではなく,南総計画中止後も「諫早湾内において」「この種の事業」の「灯」を「消」してはならない(南総当時に漁業権放棄と引き換えに約束した漁業補償を支払うためには,何が何でも諫早湾をつぶす必要がある)という至上命令から始まっているのがわかります.

参照

「知事は語る 真の動機 −県議会議事録から−」(『長崎の自然と文化』第35号)
「行政の公式資料が物語る諫早湾干拓の実態」(『長崎の自然と文化』第36号)
(誤って35号と36号を逆に書いていました.訂正してお詫びいたします.2001年1月10日)

 いずれも 諌早湾干拓事業公式資料ページ http://www.cityfujisawa.ne.jp/~559-mori/isahaya/ に収録されています.

Q8流出係数、粗度係数を逆解析で求めることはできないでしょうか

 はじめまして、質問です。流出係数、粗度係数の求めかたで、Q&AのQ6で書かれたような算出方法がありますが計算値と実測値を使い逆解析(同定)で求めることはできないのでしょうか?今、大学の研究で流出解析システムの精度を上げるため、今勉強中ですが元々水理学の基礎知識がないため困っています。 できればご意見をお聞かせ下さい お願いします。(2000年11月28日)
A

●流出係数の逆算法

 流出係数を f,ピーク雨量を r(mm/時),および流域面積を A(km2) とするとピーク流量 Q(m3/秒) は

Q =(1/3.6)・f r A  合理式(ラショナル法)

ですから,流出係数 f を求めるには上式を変形して

f =3.6×Q/(r A)

とし,これに実測値を代入してやると,流出係数を求めることができます.
 たとえば,流域面積 36km2,ピーク降水量 100mm/時,流量 500m3/秒 という場合には

f =3.6×500/(100×36) =0.5

となります.雨量について,流域面積が小さいときは最大10分間雨量を1時間あたりに換算するのが良いでしょう(例 10分間5mmならば1時間あたり30mmとなる).流域面積が大きければ最大1時間雨量をそのまま使えるでしょう.面積によっては,これらの中間(たとえば30分)の雨量を1時間あたりに換算することになります.

雨量データを読むときの注意の「時間帯の区切り方」の項目を参照ください.

 時間幅をどれくらいに取るかについては,たくさんのデータを使い,実際に計算してみて,流出係数のばらつきが最小になるものを選ぶと良いでしょう. 降水量が多くなったり降水時間が長くなったりすると,流出係数が大きくなるので注意が必要です.

●粗度係数の逆算法

 流速を v(m/s),粗度係数を n,径深を R(m),水面勾配を i とすると

v=(1/n)*R^(2/3)*i^(1/2) マニングの式

ですから,粗度係数 nを求めるには上式を変形して,

n=(1/v)*R^(2/3)*i^(1/2)

とし,これに実測値を代入してやると,粗度係数を求めることができます.
 たとえば,流速 2.7m/s, 径深 0.729m,水面勾配 0.010 という場合には

n=(1/2.7)×0.729^(2/3)×0.01^(1/2)=0.030

となります.

 流速 v,径深 R,水面勾配 i の観測法・計算法については 流量観測の方法 洪水痕跡による流量の計算 を参照ください.

 なお,当館では近いうちに,本明川水系の流量観測の実際のデータを使用して,粗度係数を算出し,その結果を公開する予定です.

Q7河床勾配がゼロの河川の流下能力の算定はどうすればよいでしょう

 はじめまして、どうしても算出方法が解らないのですが河床勾配がゼロの河川の場合,その流下能力の算定はどのようにするのでしょうか?ここ数ヶ月悩みつづけています、、、、よろしくお願いいたします。(2000年07月19日 只今修行中さんより)
A  河口近くの感潮域や干拓地・埋立地の水路は河床勾配が0(つまり水平)になっていることがあります.このような場合,等流ならば河床勾配と水面勾配は等しく水平 i =0 なので,マニングの公式
  ただし,vは流速,nは粗度係数,Rは径深,iは水面勾配
から,径深に関係なく,流速は v=0 となり,水は流れません.したがって,河床勾配が0の河川の流れはすべて不等流で考えることになります.
 まず,ある流量を任意に仮定し,限界水深を求めます(限界水深とは限界流が生じる水深のことで,流量一定のとき運動エネルギーと位置エネルギーの和が最小になる水深です.表計算ソフトExcelに数式を入れソルバーというツールを使えばかなり容易に求められます).この限界水深と水平区間の上下流両端の水深(大潮満潮位や上流側隣接区間の等流水深,あるいは計画高水位などとの関係から与えられる)の関係から上下流端の流れの種類(水深が限界水深より大きければ常流,小さければ射流)を判断します.これをもとに水平区間の流れの種類を判定します.

流れの種類上流端常流上流端射流
下流端常流水平区間常流水平区間常流(上流端付近で射流→跳水)
下流端射流水平区間上流から常流→限界流→射流全区間射流  または
上流から射流→跳水→常流→限界流→射流

 等流・不等流・常流・射流・限界流・跳水・支配断面の用語不等流計算のページで解説しています.

 下流端が支配断面となるので,下流端の水位から出発して不等流計算を行ないます.上流端(射流部分は例外.ただし,状況によっては射流部分が消滅する可能性もある)は下流の水位に影響されるので,必ずしも最初に与えた値にはなりません.
 上流端が支配断面となるので,上流端の水位から出発して不等流計算を行ないます.下流端は上流の水位に影響されるので,必ずしも最初に与えた値にはなりません.

 不等流計算のやり方は,

などの方法が考えられます.こうして求めた水位が許容範囲内に収まっていれば,仮定した流量を流す能力があることになります.

Q6合理式の流出係数の出し方がわかりません

 はじめまして。私は京都市に住む大学生です。  現在大学で河川工学を学んでいるのですが、合理式に出てくるピーク流出係数の出し方がわかりません。  意味はなんとなくわかるのですが、具体的な数値の出し方を教えてもらいたいのです。    例えば、50%が天然林で、20%が水田、残りの30%開発された土地のピーク流出係数はどのように算出すればよいのでしょうか?  ここのHPにもそれぞれのピーク流出係数が示されていますが、重みをつけて算術平均を出せばいいのでしょうか?   もしよろしければ教えていただきたいのですが・・・。 (2000年05月25日 京都市 辻 知宏さんより)
A  流出係数の数値(たとえば灌漑中の水田で0.7-0.8)は,何か公式を使って求めるというものではなく,経験則から得られたもののようです.河川関係の本には,物部(合理式を提案した人)が作った表「物部の流出係数」や,日本水道協会が制定した「下水道設置基準の流出係数」というようにいくつかの表が掲載されています.いずれも,降雨強度(単位時間あたりの雨量)が大きかったり,降雨時間が長かったりすると,同じ場所でも流出係数が大きくなるので注意が必要です.
 さて,ご質問のように森林,水田,市街地などが混在しているときにどう考えるかですが,全体の面積が小さく,雨が降ってから洪水が出てくるまでの時間(到達時間)が短い場合は,面積の割合を考慮した平均値で良いようです.たとえば,
荒木正夫・椿東一郎共著 『水理学演習下巻』 森北出版  の「第9章 水文学」のところにある例題では,
面積の1/3が商業地区(f=0.6),1/2が密な住宅地区(f=0.5),1/6が緑地(f=0.1)の場合,

全体の流出係数は   f=(1/3)×0.6+(1/2)×0.5+(1/6)×0.1=0.47   ただし,fは流出係数,いずれも「下水道」の値.

となっています.
 しかし,水田のように水を貯留する部分があったり,全体の面積が大きかったりして,洪水到達時間が長くなると,いろいろな場所から出てくる洪水の到達時刻が互いにずれてしまうため,平均(重み付き)の流出係数をそのまま適用できなくなります.個別の河川ごとに雨量と流量の観測を積み重ね,流出係数を割り出すことが望ましいでしょう.
 合理式はあくまでも簡便法なので,何かやるときには,もっと現実との適合性が高い単位図法貯留関数法などが必要になってくるかもしれません.

Q5合理式(ラショラル式)についての質問

 私の仕事に関連して次の疑問がありますので、お答え頂ければと思い質問いたします。
 流量の計算式でしばしば用いられる合理式(ラショラル式)では

Q=(1/3.6)・f・r・A 又は(1/360)・f・r・A 

となっていますが、3.6(又は360)の数字が意味するところはどんなことなんでしょうか?(2000年05月18日 山梨県 ヤオロクさんより)
A  合理式(ラショナル式)は1時間あたり r(mm) の降雨があるときに,面積 A(km2)の地面から流れ出す洪水の流量 Q(m3/秒)を求める簡易計算の式です.f は流出係数といい,雨として降った水のうち,洪水となって流れ出す水の割合です.f の値は地表の状態によって異なり,市街地で0.7−0.9,平坦な耕地で0.45-0.6,灌漑中の水田で0.7-0.8,山林で0.5-0.75程度とされています.また,雨量が多くなるほど f の値が大きくなります.
 では,3.6あるいは360の意味を知るために,公式を導いてみましょう.まず,1時間あたり r(mm) の雨がA(km2)の地面に降ったときの水量を求めます.
(体積)=(高さ)×(面積)=(雨量)×(面積) (雨量の定義を参照) ,1mm=0.001m,1km2=1km×1km=1000m×1000m=1000×1000 m2ですから,単位の換算に注意して

r(mm)×A(km2=r×0.001(m)×A×1000×1000(m2
=0.001×1000×1000×r(m)×A(m2
=1000×r(m)×A(m2
=1000×r×A(m3

 これは1時間(=3600秒)あたりの水量ですから1秒あたりに換算するには

Q=1000×r×A(m3)÷3600(秒)
=1000÷3600×r×A (m3)/(秒)
=(1000/3600)×r×A(m3/秒)
=(1/3.6)×r×A(m3/秒)

 これに流出係数 f をかけて

Q=f×(1/3.6)×r×A(m3/秒)
=(1/3.6)×f×r×A(m3/秒)
=(1/3.6)・f・r・A(m3/秒)

 面積がkm2 ではなく ha(ヘクタール) の場合は,1ha=100m×100m=100×100 m2 ですから

r(mm)×A(ha)=r×0.001(m)×A×100×100(m2
=0.001×100×100×r(m)×A(m2
=10×r×A(m3

 1秒あたりに換算すると

Q=10×r×A(m3)÷3600(秒)
=(10/3600)×r×A(m3/秒)
=(1/360)×r×A(m3/秒)

 流出係数 f をかけて

Q=(1/360)・f・r・A(m3/秒)

Q4ホームページに書かれたブレッスの式で計算すると本にある数表の値と違う結果が出ます

 私は測量設計を仕事にしているものです。水理関係に興味があり、エクセルで水面追跡計算をしようとしていろいろな書籍を眺めておりましたが、背水計算のところでブレッスの不等流関数に当たってしまいました。どの本を見ても、『巻末の表から...』となっており、B(H0/H) と B(H0/H1) を計算で求める方法が載っていませんでした。そこでインターネットでさがしていたところ、こちらのホームページを見つけた次第です。早速この式で、試算してみたのですが、どうしても、『巻末の表』と一致しません。
水面形の計算式 はどの本を見ても、このホームページの式と同じなので、当然答えも同じになるはずだと考えたのですが、なぜか全然違う値が帰ってきます。
 せき上げ背水計算においで、(H0/H)=0.8と仮定する。これを与式

の1番目の式に代入する。

tan-1をラジアンとして計算すると B(H0/H)=1.3267 となる。数表によると(H0/H)=0.8 の時、B(H0/H)=0.4198 とあり,計算と一致しない。tan-1をラジアンでなく計算しても log の底を e ではなく 10 や 2 にしてもうまくでませんでした。これは手計算で出したのですが、エクセル上でも同じ結果でした。

=+(1/6)*LN((1+D8+D8^2)/((1-D8)^2))+(1/SQRT(3))*ATAN((2+D8)/(SQRT(3)*D8))

 このような式で、D8セルに(H0/H)を入れるようにしたのですが...もしかすると根本的に考え方が違いますか?もう1つの式や低下背水もだめでした。(2000年05月16日 ばぐばぎさんより)
Aご計算は正しいと思います.問題は数表が2通りあることです
 せきあげ背水において,(H0/H)=0.8 ただし,H:ある地点の水深,H0:等流水深の場合,いくつかの水理学書の表を見ますと

(1)本間 仁 著 標準水理学 丸善  B(H0/H)=0.4198
(2)荒木正夫・椿東一郎共著 水理学演習下巻 森北出版 B(H0/H)=1.3267
(3)粟津清蔵・木村喜代治共著 演習水理学 オーム社 ψ1(H0/H)=1.3267
ψ1(H0/H)はB(H0/H)と同じ意味です.いずれの本でも B(H0/H) の定義の式は上記の式と一致します.

 お持ちの数表の値は(1)と一致します.また,ご計算の結果は(2)(3)と一致します.
 (1)の本の例題に書かれたi(河床勾配)とH1,H,H0(等流水深)Hc(限界水深)を使って計算してみると,B(H0/H)は(2)(3)の値なのに,水面形を出してみると(1)に書かれたとおりになるのです
.ということは(1)の数表の値が定義の式による値と別物だと考えるのが妥当かと思います.
 試しに数表を調べてみますと任意のH0/Hの値について(1)の値は(2)(3)の値よりも 0.9069 小さいようです.これが意味するところは不明ですが,

の{ }内は B(H0/H)とB(H0/H1)の引き算 ですから,どちらの表でも最終的な水面形が同じになるのは納得できます.

Q31999年7月23日の洪水で不知火の実測水位が満潮水位よりはるかに高くなった理由は?

 不知火の実測水位が満潮水位よりはるかに高くなる例は今回が初めてでした。「雨量と水位の関係分析結果」の方では、高くても満潮水位よる数10cmです。これは、どういう理由によるものなのでしょうか?「雨量と水位の関係分析結果」での過去の例にたまたまなかっただけなのでしょうか?
 またもし今回洪水のピークが右にずれていたら、「満潮前後には不知火の水位と大浦の潮位はほとんど同じです(とくに1992年8月15日のピーク時が典型的)」の「1992年8月15日のピーク時」と異なった結果になっていたのでしょうか? 
(神奈川県 のんきさんより)
A 不知火の実測水位が満潮水位よりはるかに高くなった理由は今回(1999年7月23日)洪水が1982年以来の大規模なものだったうえ,小潮で満潮位が低く,洪水水位と潮位の差が開いたためです.
 1992年8月15日のように「今回洪水のピークが右にずれて」満潮と重なる場合(=満潮が左にずれて洪水ピークと重なる場合)でも,ピーク水位は今回実際に観測された水位と同じになると考えられます(1992年の場合はピーク水位=満潮位>>洪水固有の水位でしたが,1999年の場合はピーク水位=洪水固有の水位>>満潮位となったところが相違点です).減水して潮位の影響を受け始めるのは水位が0.6mを切った時刻になります(紫や青で示す潮位を7時間左にずらして緑色の不知火水位との関係を考えるとわかります).このときもすでに強制排水が終わっているので,今回洪水において満潮と洪水ピークが重なっても梅崎・松崎水系で調整池による浸水軽減効果はないと考えられます

Q2不知火水位観測所で洪水と潮位がほとんど加算されないのは水理学からでも説明できることなのでしょうか

 (低平地排水効果の検証において本明川河口近くの不知火水位観測所で)洪水と潮位がほとんど加算されない、ということを今回実証的に明らかにされたわけだと思うのですが、これは水理学からでも説明できることなのでしょうか。たとえば市街地への影響がないことは収斂理論で明確に証明できたと思うのですが、(収斂前の)河口近くなら潮位の影響は多少とも出るのではないかとも想像していました。(東京都 小市民さんより)
A 水理学は水の物理学なので,当然どんな観測結果であっても説明できるはずです.もし説明できなければ理論(モデルの適用や計算)のほうが誤っていることになります.すでに計算して公開している不等流計算のグラフは大潮満潮位と干潮位の比較なので中間の潮位の場合どうなるか別に計算する必要があります.
 不知火観測所で潮位の影響が予想外に小さいもうひとつの理由は潮位が低くなると諫早湾の干潟が露出して本明川の実質的な河口が沖合いに移動するからです.計算ではこれを考慮してないので,実際の収斂は計算上の位置よりもさらに下流でおこることになります.

Q1水路や排水機場の管理はどこの機関がやっているのですか?

 湾の締め切りで浸水問題は解決すると本気で考えていたにせよ、度重なる浸水でもうそれが幻想だったと証明されているわけですから、そろそろ水路の拡張整備やポンプ増設計画にも本腰を入れて取り組んでもらいたいものです。(東京都 小市民さんより)
A 排水機場については建設省(諫早市に委託),諫早市や水利権組合などが管理しています.水路の管理者については現時点では未調査です.諫早市の仲沖および小野島地区では水路の拡幅や排水機場の増設が干拓工事と同時進行で行なわれ,効果が出ています.そのせいで,干拓による防災効果が出ていると思いこんでいる人が少なくありません.
    関連ページ 諫早湾周辺低地の水路系統 諫早湾周辺の排水機場


http://www.fsinet.or.jp/~hoteia 制作・著作 布袋 厚 1999・2000年